正解は一つではない?「秋茄子は嫁に食わすな」ということわざの真意

8世紀頃、中国から渡来したと思われるナス。日本の暮らしにすっかり溶け込んでいます。お盆にはご先祖さまを乗せる牛の役まで担っています。

ナス
漬け物や焼きナス、煮物、炒め物などと幅広く利用される。

ナスの特性が生んだ格言

 夏は旬の野菜が多い季節です。ハウス栽培が盛んになって、四季を通じて食卓にのぼるものが多い時代ですが、露地ものの旬の野菜を、季節の移ろいと一緒に食せば、さらに味わいが深くなるのではないでしょうか。

 夏から秋にかけての、旬の野菜の一つにナスがあります。「秋茄子は嫁に食わすな」ということわざがありますが、これは、秋のナスは味がいいので、嫁に食わすのはもったいないという意味。

 こういったことわざが生まれた時代がいつなのかわかりませんが、善し悪しはさておくとして、現代では少々違和感がありますね。
 このことわざの元をたどると、姑の嫁いびりが根底にあるようですが、じつは、このことわざには意味の異なるいくつかの説があります。

 一つは、秋茄子は体を冷やすので、大切な嫁には食べさせるなというもの。嫁いびりとは逆で、この場合には嫁を気づかっています。

 二つ目は、秋茄子は種が少なく、それを食べて子種がなくなると困るから食べさせるなというもの。

 三つ目は二つ目とは正反対で、秋茄子は種が多いから、はらみやすくなるので食べさせるな、というものです。種の数を数えた人がいたのかどうかわかりませんが、なぜこんなに正反対な意味になったのやら。

 四つ目は、嫁はネズミを形容したものという説ですが、これなどはほとんど意味不明です。

 秋茄子は嫁に食わすなということわざの真意はどれでしょう。わたしにも判断がつきませんが、もしかしたら正解は一つではないのかもしれません。
 あるいは、地域や年代によって捉え方が異なり、すべて正解ということも考えられます。まあ、とりあえず好みの説を唱えてみてはいかがでしょうか。

 ところで、ナスは野菜のなかでも特によく実がなることから、「物事を成す」などと使われる「成す」が名前の由来といわれています。

 ナスはウリ類などと異なり、雄花と雌花が分かれていないため、実際に結実率が高いそうですが、花が落ちた場合でも、それが目につきにくいことから、よく実がなるという印象が強調されたようです。

 この結実率のよさがもとになっていることわざもあります。「親の意見と茄子(なすび)の花は千に一つも無駄はない」というもので、「ナスの花は咲けば必ず実になる。同じように、親の意見は必ずためになる」という意味です。
 現実にはためにならない意見もたくさんあると思いますが、それはともかく、そのくらい実がなるということを例えた言葉です。

 

栄養価は低くても別の利点が

 せっかくですからナスの栄養分などについて触れておきましょう。
 残念ながら栄養価の点ではあまり期待できません。なにしろ全体の90パーセントは水分で、ビタミンやミネラルなどはきわめて少なく、したがってエネルギー価も高くはありません。
 ただし、逆に考えれば、体重を減らそうとしている人などにとっては好都合でしょう。

 スポンジのような質感を持つ果肉には、活性酸素の働きを抑制するクロロゲン酸が含まれています。クロロゲン酸はポリフェノールの一種で、細胞の老化予防に貢献するとされています。
 ただし、クロロゲン酸は、それほど強いものではありませんが料理のうえではアクという存在になってしまいます。

 俗にナス紺などと呼ばれる皮の濃い紫は、フラボノイドの一種アントシアニンという植物色素です。ブルーベリーなどにも含まれていますが、この色素には血液をさらさらにする力があるといわれています。

 特にナスのアントシアニンはナスニンと呼ばれ、抗酸化作用があります。また、コレステロール値を低下させる力もあることから、高血圧症や脂質異常症などの緩和に役立つと考えられます。

 いまはナスがおいしい時期です。旬の味を存分に味わってみてはいかがでしょうか。何事か成るかもしれません。