
かつては自然環境のなかに営巣
日本の代表的な夏鳥であるツバメはスズメ目ツバメ科に属す渡り鳥で、ツバクロやツバクラなどとも呼ばれます。
スズメ目のなかではもっとも旋回能力に優れるなど非常に機敏なことから、空中での行動を得意とし、飛行中にハエやカ、アブなどの虫を捕食します。
反対に、脚は小さめで弱く、地上を歩くことは苦手です。
ツバメの多くは4月ごろから5月ごろにかけて渡来します。軒下などに作られた巣の中で、卵を抱いている姿を見かけた方も多いのではないでしょうか。
ツバメは人家に営巣、つまり巣を作るという意味で言えば珍しい鳥ですが、本来は他の鳥と同様、自然環境のなかで営巣していたようです。
それがいつのころからか、人間の作った建造物だけに営巣するようになったようなのですが、これは、人間の力を借りて、天敵であるカラスや、卵の敵であるヘビなどの外敵から身を守るためだろうというのが有力な説です。
なぜそんなに人間を信頼してくれるのかわかりませんが、たいていの人間は頼られれば悪い気はしないはず。あたたかく見守ってやろうという気になります。
「窮鳥懐に入る」とか、「窮鳥懐入れば猟師も殺さず」ということわざがありますが、これは、「追いつめられた鳥は人のところに飛び込んでくることがある。そして、そんなときは助けてやろう」という意味です。
ツバメがそんなことわざを知っているはずはありませんが、人間の心理のいいところを突いています。
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ツバメも〝住宅事情〟が厳しい
ツバメは一度の産卵で平均5個の卵を生み、それはおよそ2週間ほどで雛となります。夏の間に成長した若鳥は、10月頃には日本を離れ、暖かい地方へと渡っていきます。
そして次の年、ふたたび巣へ戻ってくるというサイクルを繰り返すわけですが、巣へ戻ってくるのは、前の年に生まれた子ツバメではなく、親ツバメのほうです。
子ツバメはどうするのかというと、親から独立し、別の場所を探して営巣することになります。
それにしても、親ツバメは故郷をよく覚えているものだと感心します。
「雁(がん)が帰れば燕が通う」ということわざがあります。ガンは秋に渡来して冬を日本で過ごし、春には去って行きます。春に渡来して秋に去るツバメとは逆のパターンです。
このことわざの言わんとすることは、去って行くものもあれば来るものもあるというたとえです。
せっかくですからガンについて少しお話します。
ガンはカモ科の渡り鳥の総称です。単にガンという名前の鳥はいません。通常「ガン」と呼ぶ場合にはマガンをさすようです。また、カリの異名も知られていますね。
ガンはカモによく似ていますが、カモより首が長く、体は大形です。
ところで、営巣しやすい家屋が年々減少していることに加え、舗装が増えて土や虫を探すのが困難になったり、あるいは騒音や夜間の照明で棲みづらくなったりと、環境の悪化が激しくなって大変なようです。
住宅事情が厳しいのは、どうやらツバメの世界でも同じようですが、人間にとってもツバメにとっても、住みよい世界になってほしいものです。