「春一番」と呼ばれる条件とは。どこのどんな人たちが作った言葉?

春の訪れを告げる風といわれる「春一番」。普段は深く考えずにつかっている言葉ですが、少々深い意味があります。

海の風景
漁業や養殖などを営む人たちにとって、強風や高波は脅威となる。

「春一番」にも認定条件がある?

 2月も半ばを過ぎると、まだ冷え込む日があるものの、花の開花状況や天気の移り変わりなど、あちらこちらから春の便りが聞こえてきます。

 季節が冬から春へと移る、ちょうど今ごろの時期になると、冬のあいだ、冷たい北風や西風を吹かせていた西高東低の気圧配置がくずれ、代わりに日本海低気圧などが日本付近を頻繁に通るようになります。

 その低気圧が急速に発達し、強い南風が吹き荒れることがあります。これが、春の訪れを告げる風といわれる「春一番」です。春一番は、省略した形で「春一」とも呼ばれます。

 ところで、ひとくちに強い南風といっても漠然としていて曖昧ですが、どんな風を春一番と呼ぶのでしょうか。
 じつは、明確に定義する基準はないのだそうですが、一応「立春から春分までのあいだに初めて吹く、南寄りの強い風」ということになっているようです。

 この〝強い風〟というものにも決まりがあり、毎秒8メートル以上の強さが必要なのだそうです。
 ちなみに、気象情報などで用いられる風の強さは、「やや強い風」が10メートル以上15メートル未満、「強い風」が15メートル以上20メートル未満、「非常に強い風」が20メートル以上30メートル未満、「猛烈な風」が30メートル以上と表されます。

民間の暮らしから自然発生的に〝誕生〟

 島根県の隠岐諸島では、冬の北風を防ぐため、冬のあいだじゅう、北側の雨戸を閉めたままにしておくのだそうです。
 その雨戸に春一番が吹きつけると、叩くような大きな音を立てます。そして島の人たちは、その音で春の訪れを知るのだといいます。

 春一番という名は、能登や志摩から西の地方、あるいは壱岐の島などの漁師たちが、春を呼ぶ風という意味で使っていたといわれています。
 つまり、気象関係の人たちが作った専門用語などではなく、民間の暮らしから生まれた言葉というわけです。

 春の訪れを告げるのだからありがたい風のはずですが、いいことばかりではありません。まだ春一番などという気のきいた名前がなかった昔から、この風による海難事故が起きていました。
 小型で、しかもエンジンなどとは無縁の時代には、海へ出る人たちにとって大きな脅威だったに違いありません。

 そして戦後、1950年代という説もありますが、春一番という言葉が新聞などでも使われるようになり、一般化していきました。

 春一番があるからには、二番や三番があっても不思議ではありませんね。実際にその名を見聞きすることはまれですが、春二番も春三番も立派に存在します。
 それどころか、場合によっては春四番くらいまで使われることがあるのだそうです。

 順番はともかく、早く暖かい春風が吹いてほしいものです。