初夏の山野に彩りを添えるシャクナゲ。花の色は白から真っ赤まで多彩

貫録のある花の形から〝花木の帝王〟と呼ばれる石楠花。交配品種も多く、庭園から街路樹まで幅広い人気があります。

シャクナゲ1
初夏、標高の高い山地を彩る。

日本の野生種は4種類

 シャクナゲはツツジの仲間の常緑低木または小高木で、シャクナゲ亜属の総称です。ですから、ただの〝シャクナゲ〟という種類はありません。ただし、単にシャクナゲと言った場合でも、状況によってはホンシャクナゲやアズマシャクナゲをさしていることがあります。

 シャクナゲの多くは4月下旬から6月頃にかけ、品種によって赤やピンク、紫、黄色、白などの花を咲かせます。
 花はツツジのそれによく似ています。漏斗(ろうと)状の合弁花がいくつか集まった総状の花で、威厳のある豪華な雰囲気が漂います。

 花の形はツツジに似ていますが、葉の形はまったく異なります。ツツジよりかなり大きく、細長い楕円形をしています。

 ヨーロッパやアジア、北アメリカなどに分布し、木は大きなものでは高さ8メートルほどになるものもありますが、日本産のものの多くは4メートル程度です。

 日本では、高山帯から亜高山帯にかけてキバナシャクナゲやハクサンシャクナゲ、それらより低い山地にツクシシャクナゲやホソバシャクナゲが自生しています。

 シャクナゲは温帯から亜寒帯に分布しますが、キバナシャクナゲは寒帯にも分布しています。樹高は50センチから60センチと低めで、花は名前の通り黄色です。

 亜高山帯に分布するハクサンシャクナゲは樹高が3メートルほどになり、ほかのシャクナゲよりは遅い7月から8月にかけ、白系や淡いピンク系の花を咲かせます。

 セイヨウシャクナゲと呼ばれるものもありますが、これは世界各地のシャクナゲから作られた交配品種の総称で、その種類は1,000種以上になります。

 そんな話を聞くと、簡単に改良や栽培ができそうに思いますが、それは園芸品種の場合で、野生種となると栽培は非常に困難なのだそうです。
 ちなみに、増やす方法には株分け、種から起こす実生などがあります。

「石楠花色」はどんな色?

シャクナゲ2
白から濃い赤まで、シャクナゲの花は多彩だ。

 山深いところの尾根や岩場には、野生種のシャクナゲが見られます。尾瀬ヶ原からも目にすることのできる、片品村の至仏山(しぶつさん)には、ピンクの花をつけるアズマシャクナゲがたくさん自生しています。

 「夏がくれば思い出す」という歌い出しで始まる、詩人、江間章子(えま・しょうこ)作詞による名曲「夏の思い出」に、〝石楠花色にたそがれる〟という一節があります。
 初夏の尾瀬では、ピンクの花を咲かせるアズマシャクナゲや、白い花を咲かせるハクサンシャクナゲが彩りを添えます。江間の言う石楠花色とはどんな色っだのでしょう。ピンクでしょうか、それとも白でしょうか。

 シャクナゲは「花木の帝王」とも呼ばれますが、その形容の根拠は花の貫禄に由来しているようです。合弁花がいくつも集まった総状の花は、やはりただ単に大きい花とは異なる迫力や威厳が感じられるのでしょう。

 シャクナゲは観賞用として好まれるだけでなく、庭園用や街路樹などとしても栽培されます。また、硬めできめ細かい材は、工芸品などの小細工用としても重宝されます。

 漢字では「石南花」や「石楠花」と表記しますが、これらは中国産のオオカナメモチを誤って用いたもののようです。
 ちなみに、花言葉は「威厳」や「荘厳」です。