
血縁関係ではフナやコイと親戚筋
古くから観賞用の魚として親しまれている魚といえば金魚が筆頭ではないでしぃうか。夏祭りの露店などでもおなじみで、金魚鉢や金魚草などという名前もあるほどです。なかには、金魚にとってはありがたくない〝金魚のふん〟などという言葉もありますが。
金魚の生まれ故郷は、揚子江下流の浙江省や江西省付近の地域で、2世紀の中ごろには、現在の金魚の祖先ともいえる緋鮒が存在していたという記録があるそうです。
緋鮒という名前でお気づきかと思いますが、生い立ちにはフナが関係しています。染色体がフナと同じ型で数も同じです。
同じ系統の交配によってフナによく似た個体が出現することから、金魚はフナの変種であろうといわれています。ただし、学問上ではコイ目コイ科に分類されています。
話は戻りますが、緋鮒は鮒の突然変異種で、黒い色素がなく、赤味がかっただいだい色をした品種です。
緋鮒の飼育が始まったのは12世紀から13世紀頃。日本には明から渡来しましたが、室町時代の1502年のことでした。これが、日本で在来種と呼ばれる、いわば金魚の元祖です。
ところで、英語では日本語をそのまま訳した感じのゴールドフィッシュです。やはり見た目の雰囲気は共通しているようです。
ちなみに中国でも、金魚を意味する〝チンユウイ〟、韓国でも同様に〝キムポン〟ということです。
新しいものや初物は、いつの時代でも高嶺の花だったのか、渡来した当初は貴族や豪商などの上層階級や、一部のマニアの間で飼われていただけでした。
一般の人たちにも飼われるようになるのは、それから200年以上も後、江戸時代半ば、享保年間頃になってからのことです。
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金魚一族は繁栄の一途
その後は交雑によって新たな品種が作られたり、第二次大戦後には別な品種がアメリカや中国から輸入されたりで、金魚一族は繁栄の一途をたどります。
おもな在来種では和金(わきん)、琉金(りゅうきん)、出目金(でめきん)、頂天眼(ちょうてんがん)などがよく知られています。
日本で作出されたものでは、蘭鋳(らんちゅう)、和蘭獅子頭(おらんだししがしら)、地金(じきん)、土佐金(とさきん)、朱文錦(しゅぶんきん)、キャリコなどが定着しています。
ところで、現在養殖が盛んな地域は、奈良県大和郡山市を筆頭に、愛知県弥富地方、東京都江戸川区、埼玉県の一部などだそうです。
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金魚を売る商売は、金魚の渡来と同時に始まりました。愛玩用や観賞用の魚として、庶民の間にもすっかり定着した1700年代の半ばを過ぎた頃からは専門店もでき、行商も行なわれるようになりました。
江戸時代後期の風俗を扱った守貞漫稿という本には、笠をかぶって着物の裾をはしょった草鞋履きの男が、たらいのような器を天秤棒で担いでいる金魚売りの絵が載っています。
この絵では、どんな金魚だったかまではわかりませんが、この姿だけでも十分風情があるというものです。
ところで、金魚は生育環境に恵まれると、体長が25センチにもなる大物や、寿命が20年を超えるものもいるそうです。