成人が1日に必要な量のDHAとEPAを、サンマ1尾で摂取できる

脳の働きをよくするDHAや、血栓や動脈硬化防止に役立つといわれるEPA。これらをサンマは豊富に含んでいます。

サンマ
産卵のために回遊してくるものは脂が乗って特においしいとされる。

漁獲量トップは北海道

 秋の味覚の一つであるサンマの漁は、北方の海で夏から始まって徐々に南下し、魚体に脂がのる晩夏のころから本格化します。

 日本近海のサンマは千島列島から沖縄諸島付近まで広い範囲で回遊するため、漁場も各地に形成されますが、大きな漁場は北海道を筆頭に、岩手、宮城、福島などの各県の海域で、この地方だけで日本の漁獲量の80パーセントを占めるほどです。

 サンマは大海を回遊する魚であり、すべて自然の海洋から漁獲されるものです。養殖はおこなわれていません。

 個人的には焼いて食べるのがもっとも好みですが、缶詰やみりん干しなども多くの家庭で食卓にのぼります。また、紀伊半島では丸干しにしたり、寿司種にしたりして食べます。

 多くのかたがご存じかと思いますが、漢字表記では「秋刀魚」です。字義の通り、体形が刀のようであることから当てられたものです。
 では「さんま」という名前自体の謂われはどんなものでしょう。もともとは体型が狭くて長いことから「せまな(狭真魚)」と呼ばれていて、それが次第に訛り、「さんま」で落ちついたという説があるそうです。

 サンマは、どんなわけがあってのことか、江戸時代頃には下賎な魚、つまり、賎しい魚とされていました。現代では栄養価の高い優れた食品として名誉を回復していますが、当時のサンマにとっては偏見もいいところ。さぞやご立腹だったことでしょう。

内臓には残留物が少ない

 サンマには胃がないうえ、食べた餌は短時間で腸内を通過して排泄されてしまいます。ですから、漁獲された場合でも体内の残留物はきわめて少なく、内臓も傷むおそれが少ないことから、鮮度が比較的高く保たれるという特徴があります。

 私の祖母は内臓まですべて食べたという話を母から何度も聞かされましたが、先人たちはサンマの内臓がきれいだということを知っていたのかもしれません。もっとも、現代でも内臓まで食べるという人は少なくないようですが。

 さて、栄養ですが、いまではよく知られている、俗にDHAと呼ばれるドコサヘキサエン酸と、EPAと呼ばれるエイコサペンタエン酸の二つを豊富に含んでいます。

 DHAは脳の働きを活性化し、EPAは血栓や動脈硬化などを防ぐというものです。この二つの一日必要量を、なんと、わずか1匹のサンマで賄うことができます。

 このほかにも、魚体の20パーセントもの脂肪、大量のビタミンDやB12を含み、蛋白価では牛肉や豚肉をはるかに上回るなど、下賎どころか上等な魚で、海洋国日本にとっては重要な水産資源と言えます。

 味を左右する脂肪の量は漁獲時期によって変動しますが、量が多くておいしいのは、9月半ばから10月頃のもののようです。