蚊取り線香の原材料ジョチュウギク、どんな成分が蚊を撃退するのか

昔から続く人類と蚊の果てなき戦い。蚊の絶滅を期待するのはまさにはかない夢。やはり頼るのはジョチュウギク?

蚊取り線香
古くからのこのスタイルには、電気式の蚊取り器にはない風情がある。

血を吸う蚊は雌だけ

 数ある生物のなかには、絶滅してしまったものや絶滅が危惧されるものもいますが、反対に、絶滅してほしくても、まったくその兆候がないものもいます。夏の嫌われもの、蚊もその一つです。

 蚊は、世界ではなんと2,500種、日本だけでも103種が確認されています。雌の成虫はすべて吸血性です。先人たちの時代からずっと雌の蚊に悩まされ、現代人もいまだに悩まされ続けているというわけです。

 古くから繰り広げられてきた蚊と人類との熱き戦い、いや、痒き戦いで、昔から使われていたのが煙による撃退法でした。これは「蚊遣(かやり)」と呼ばれ、囲炉裏や火桶などで、香料、木片、大鋸屑、杉の葉などを焚くというものでした。
 江戸時代には大鋸屑に硫黄の粉末を混ぜたものも登場しましたが、効き目のほどは知る由もありません。

 現在の蚊取り線香誕生のきっかけとなったのは、明治18年に、アメリカ人H・E・アーモアによってジョチュウギク(除虫菊)が渡来したことでした。

 ジョチュウギクの原産地は、バルカン半島のダルマチアという、日本から遠く離れた地方ですが、運よく日本の気候風土に適していたため、盛んに栽培されるようになりました。
 ジョチュウギクはキク科の多年草で、シロバナムシヨケギク(白花虫除け菊)の異名を持つほどの殺虫効果を誇ります。ちなみに、ノミ(蚤)取り粉や農薬などにも用いられます。

 そして、そのジョチュウギクを粉末にした蚊遣粉、あるいは蚊遣香と呼ばれる〝新型蚊遣〟ともいうべきものが開発されました。
 この、粉末だった蚊遣粉を固形にしたものが蚊取り線香というわけです。

 

渦巻き型になったのは明治28年

 蚊取り線香の作り方を簡単に紹介すれば、まず、除虫菊の花、茎、葉などを乾燥させて粉末にし、布海苔や椨粉、着色剤などを混ぜて水で練ります。
 次に、それを押し出し機で板状に成型します。そして、渦巻き型に打ち抜いて乾燥させるという工程です。

 初代の蚊取り線香が誕生したのは明治23年でしたが、当時のものは普通の線香のような棒状でした。
 長さ30センチで、燃焼時間はおよそ1時間。現在のような渦巻き型になるのは5年後、明治28年のことです。

 蚊取り線香には、ジョチュウギクに含まれている殺虫成分のピレトリンとシネリン、人工的に作り出された成分であるピレスロイドが用いられています。
 これらの成分は人間にはほとんど無害とされていますが、狭い空間などで長時間線香を焚くのは、やはり避けるに越したことはないでしょう。特に、呼吸器系に疾患がある場合などには要注意です。

 現在、日本での除虫菊の栽培は観光用などとしてわずかに行なわれているだけですが、第二次大戦前には世界の生産量の70パーセントを占め、その90パーセントが輸出されるという、重要な輸出品にまでなっていたそうですから、この点については、憎まれっ子の蚊も、だいぶ貢献したと言えなくもありません。
 ちなみに現在、除虫菊の主な産地となっているのは、アフリカのケニアやタンザニアなどです。